【特集図書・2023年3月】

こんにちは!立命館大学びわこ・くさつキャンパスに所属している学生ライブラリースタッフです!

今回は、大学入試センター試験・大学入学共通テストで出題された評論・小説を集めました。普段は読まない本かもしれませんが、一度手に取ってみてください。今年も3月になりました。これらの本の中から新学期に向けて新しい気づきや発見が出来る一冊が見つかれば幸いです。

江戸の妖怪革命』、香川雅信、河出書房新社 、2005年

 皆さんは、妖怪が存在していると思いますか。居るとすれば、一体どういう存在だと思いますか。私は、実は自分が妖怪なのかもしれないと不安になり、夜しか眠れません。妖怪は一体どのようにして生まれたのか。妖怪にはいったいどんな役割があるのか。妖怪はどのように変化をしてきたのか。読むことはもちろん、共通テストの設問も面白いです。是非、お楽しみください。

境界の現象学 : 始原の海から流体の存在論へ』、河野哲也、筑摩書房、2014年

 「レジリエンス」という言葉を皆さんはご存知でしょうか。もともとは物性科学での「弾性」を意味していましたが、時代の流れとともに生態学や心理学、精神医学、そして近年ではエンジニアリングの分野でも使われるようになった非常に汎用性の高い言葉です。
 インターネットの発達により加速化する現代で私たちに求められるもの。その内の一つである「レジリエンス」について学べる1冊です。

キャラ化する/される子どもたち : 排除型社会における新たな人間像』、土井隆義、岩波書店、2009年

 「着せ替え人形のリカちゃんは~」から始まる問題文の冒頭が印象に残っている人も多いのではないでしょうか。この本では、価値観が多様化した現代社会において、普段私たちが何気なく使っている「キャラ」という言葉をキーワードに、閉塞感や恐怖感、現代社会における人間関係について考察されています。何気ない日常の中で要求される「キャラ」から、自分のあり方について少し考えてみませんか。

運動する認識/世界思想第40号(出典)』、北垣徹、世界思想社、2013年

人間の認識の仕組みについて、時代的な背景を基に論じた文章です。かなり難しい文章ですが、じっくり読んでいくとだんだん理解できるようになっていきます。試験会場では急かされながら流し読みした人もいると思いますが、今はたっぷり時間があるのでゆっくり味わいながら読んでみてください。

羽織と時計/世の中へ ; 乳の匂い: 加能作次郎作品集(出典)』、加能作次郎著 ; 荒川洋治編、講談社、2007年

皆さん、ひょんなことから疎遠になってしまった友人はいらっしゃいませんか。この作品は、高価すぎる「羽織と時計」を送った”W君”と、もらったのに不義理を働いて葛藤する“私”の物語。意外過ぎる結末に驚くこと間違いなし。試験開始!

翳/原民喜戦後全小説(出典)』、原民喜、講談社、2015年

 1945年8月6日午前8時15分。突如として現れたきのこ雲が広島の空を覆いつくしました。人類史上初めて原子爆弾が投下された日です。郷里の広島でこの惨劇を目の当たりにした筆者は、地獄絵図と化した当時の状況を後世に残すべく筆を執りました。
 戦禍の記憶、そして戦争の悲惨さを克明に記した1冊です。

孤児の感情/川端康成初恋小説集(出典)』、川端康成、新潮社、2016年

 物語は、親が死んでから別々に引き取られ滅多に会わなかった妹が、結婚相手に会うために上京して主人公の下宿に泊まることになった──というところから始まります。出題されたのは妹が上京してくる冒頭の場面です。初めて兄妹らしい会話を交わす主人公と妹の距離感、実は主人公と面識のある結婚相手との話など、冒頭の続きも魅力的ですので、是非一度読んでみてはいかがでしょうか。

石を愛でる人/感光生活(出典)』、小池昌代、筑摩書房、2007年

インパクトのあるタイトルなので、覚えている人も多いのではないでしょうか。随筆風の小説で、石が大好きな「私」と「山形さん」との交流がつづられています。作者が詩人ということもあり、「小石ども」や「とくとくと」など表現の仕方が面白いので楽しく読むことができます。気になった方はぜひ一度読んでみてください。