「第85回:しんどくても面白い事を」

保井 智香子 YASUI CHIKAKO

食マネジメント学部 准教授

【研究テーマ】
1.スポーツにおけるハイパフオーマンス追及時の 
  メンタルサポートと食意識・食習慣の検討
2.中学生の食生活,身体組成と体力・運動能力,
  心理面に関する実態調査
3.青年期男女の体格・体脂肪と運動量・食事量・
  生活習慣との関連
【専門分野】
健康教育、栄養教育、健康スポーツ科学
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インタビュー:学生ライブラリースタッフ 岡田・小田・松本陸

保井先生の研究テーマである「栄養教育」についてわかりやすく教えてください。

例えば、どういうものを食べたらいいか、どういう食生活をすると自分の体が変化するのかを教えてもらったとしたら、興味がある人は実際に取り組むでしょう。取り組むと食行動が変わるので、栄養の状態が変わり、体も変わってくる。小さなお子さんからお年寄りまで、健康というのはずっと関心事です。どの年代であったとしても、自分の体についての話を聞くことで、より良い体作りができるということが大切です。他にも、栄養についてお話しする対象がスポーツ選手だったら、その競技においてどういう体作りが良いのか、どういうものを食べたらいいのかをお教えする内容になりますね。

教育の分野にもかかわってくるのですね。

そうですね、どのようにして物事を伝えるのか、どのような資料を教材に使うのかといった教育手法が大切だと思います。私は食べ物や栄養素といった専門分野について話す際、分かりやい説明を心がけています。いかにしてお伝えしたことを実行してもらうのかが鍵になります。行動を変化させなければその人のより良いからだ作りは達成しないので、私としては、行動変容を促すことをポイントに置いています。

栄養学を専攻したきっかけを教えてください。

私は栄養学をしたくて大学に行ったというよりは、サッカーをするにはどこの大学に行ったらいいかなという感じでした。まずサッカー部のある大学を探して、色々学部はあるけど管理栄養士の資格が取れる学部がいいから管理栄養士の学部にしようっていう動機です。これはあまり良くないかもしれない(笑)。でも、それがスタートになっているから、結果的には良かったですね。

学生で進路が見つからない人は多いと思いますが、そういう学生に向けてアドバイスをお願いします

大学卒業後にお仕事につくとしたら、1日24時間ある中で1日の3分の1以上、もしくは半分近くの時間をそのお仕事に費やすことになりますよね。おそらく、楽しくてよいことばかりではないと思います。働いていると、良いことも嫌なこともあります。けれども、総合的にみて1日をこの仕事に費やすなら満足だと思えたらいいのではないでしょうか。おいしいとこだけ欲しいけど、そんなに世の中うまくはなっていないですよね。お給料をもらってお仕事をしていますから、やっぱり大変なことも多いと思います。1番いいのはハッピーなことばっかりでお金をもらえることですが、それを見つけるのはとても難しいと思います。大変なことも多いけれど、良いこともあって、まあまあこんなもんかな、っていうぐらいがちょうど良いのかもしれないですね。皆さんも興味がある事はどれだけハードでも頑張れると思います。表現を変えれば多くの時間拘束されているけど、やっている間が面白いなとか、しんどいけど面白いなとか、そういう瞬間があるっていうのが1番いいのかなと思います。

先生の仕事の面白さはどこにありますか。

私が学び、研究した成果を皆さんにお伝えした後に、納得し実践してくださった方から「よかった」というフィードバックを貰えるのが嬉しいですね。色々な研究はあると思いますが、どう実践に活かしてもらうのかは重要です。皆さんが「やってよかった」ということになれば、それが一番うれしいなと思います。

大学生活ではどのように図書館を利用されていましたか。

みなさんの時代はインターネットが主流だから、図書館を活用しなくても良いのかもしれないですね。私たちの時代にインターネットはなかったから、分からないことへの手掛かりはやっぱり本でした。今はインターネットを調べたら動画もあるし、詳しい情報もありますね。今だから必要なことは、その情報が正しい情報なのかどうかきちんと把握して利用することです。例えば、教科書のような書籍であれば信頼があったので、私たちの時代は何か調べ物をするとなると本が頼りでした。

影響を受けた本を教えてください。

『佐々木敏の栄養データはこう読む!』

難しいな。でもこういう本は面白かったかも。「栄養データはこう読む」っていう科学的根拠に基づいたグラフやデータが載っています。データをどう読み解くのかは教えてくれそうで、あまり教えてもらえません。みなさんは、高血圧なら食塩を控える必要があるとは聞いたことがあるかもしれないけれど、どうして食塩は高血圧に関係しているのだろう、本当なの?といった感情を抱いているかもしれません。本書では、そんな疑問に対する解が科学的根拠に基づいて書かれているので面白いです。他には、スポーツ関係の本も読みますね。

学生におすすめの本があれば教えてください。

人との関わり方の本かな。誰かから教わることはあまりないと思うので。クラブ活動やアルバイトをしている場合は、こういう話し方が良いよとか、いろいろと教えてもらえるかもしれないけど、それはわずかな話だと思います。だから、ビジネスにおける礼儀やマナーについて書かれた本の内容を知っておくと、役に立つかもしれませんね。どんなお仕事をするにしても大切だと思うので。人との関わりの中で、何か物事を作ったり、進めていったりするのであれば、コミュニケーションスキルを身に付けておいて損はないと思います。誰かにお願いしたいときや逆にお願いを断りたい場面でも、コミュニケーションスキルを活用して相手に嫌な思いをさせず上手に断れたら、とてもハッピーだと思いませんか? 相手が不快に思わず「忙しいなら違う人に頼むね」と言ってくれた方が場はスムーズになるでしょう。きっと皆さんが働き出したらそんな経験がでてくると思います。

最後に学生にメッセージがあれば教えてください。

そうですね、この大学生活を終えると社会人になってしまうので、やりたいことを学生時代に存分にやっておくとよいですね。社会人になったらお金は頑張って働いたら頂けるけれど、自由な時間は学生の時よりも減りますね。大学時代の時間をどう使うか、とても有意義な時間にして欲しいと思います。スポーツがそうかもしれないし、アルバイトでお仕事に熱中することもその1つかもしれないです。友達とワイワイやることも大事だと思います。有意義な時間の定義は、みなさんの価値観によって違うと思います。あの時よかった、面白かったって言える経験を大事にすると良いですね。そうはいっても、過去が良かったということを、いつまでも引きずってはいけないですね。今が一番いいっていう思いで常に過ごしてほしいと思います。今もよいけれど、あの時も面白かったよねっていうような。今を全力でやりきることが大切ですね。大事な時間をどう使うか。寝ていても1時間、友達とワイワイするのも大切な1時間です。時間だけはみんなに平等なので、どのように過ごすのかがポイントだと思います。

保井先生、ありがとうございました。

紹介する書籍

佐々木敏の栄養データはこう読む! : 疫学研究から読み解くぶれない食べ方 / 佐々木敏著