【特集図書・2023年5月】

 こんにちは!BKC学生ライブラリースタッフです。

 新入生の皆さんはそろそろ新しい生活にも慣れてきたでしょうか。今回は、「短編小説」をテーマに1冊でSF、ミステリー、恋愛など幅広いジャンルを楽しめる本を紹介しています。ぜひ図書館に来て、お手に取ってご覧ください。

ヴィヨンの妻・人間失格ほか』、太宰治、文藝春秋 、2009年

 太宰治の代表作の『人間失格』を始めとして、『ヴィヨンの妻』『二十世紀旗手』『桜桃』『姥捨』『燈籠』『きりぎりす』『思い出』を収録した傑作集です。
 皆さんの大半の人は一度は『人間失格』を読んだことがあるでしょう。しかし、『走れメロス』や『人間失格』以外の作品を読んだことがない方の方が多いと思います。そんな方にはぜひこの本を手に取って読んでみることをお勧めします。改めて読んでみると様々な感想を抱いて新鮮な気分になれるかもしれません。

我らが隣人の犯罪』、宮部みゆき、文藝春秋、1993年

 宮部みゆきさんといえば長編作品が有名ですが、実はこの本は物語5編からなる短編集です。その中から、今回は表題作になっている『我らが隣人の犯罪』を紹介します。
 主人公の三田村誠は両親の仕事の独立に伴い中古のタウンハウスに引っ越してきた中学1年生。右隣には橋本美沙子という30歳くらいのミリーという犬を飼っている少し特殊な1人の女性が、左隣には田所さんという、ごく普通の夫婦が暮らしていた。このミリーの鳴き声によって悩まされることをきっかけにして__。

味の台湾』、焦桐(著)川浩二(訳)、みすず書房、2021年

 台湾の味とは何か?その問いに答えるために詩人でもある著者は十数年の歳月を費やしました。この本には、台湾の特色を備えた食べ物と著者の人生を交えて書かれた散文が60篇収められています。台湾の料理を豊かな表現で描き出し、見たことも食べたことも無い料理であっても、読んでいるとお腹が空いてきます。著者の人生に思いを馳せながら、ゆっくりと味わって読んで頂きたい1冊です。

素敵な日本人 : 東野圭吾短編集』、東野圭吾、光文社、2017年

ベストセラー作家である東野圭吾さんの短編集であり、日本人に馴染み深い四季折々の行事を題材としています。ミステリーから、SF、心温まる家族の話まで、様々な話があり、東野圭吾の世界をまとめて堪能することができます。
 どの話も面白いですが、おすすめは『水晶の数珠』です。アメリカで俳優を目指している主人公と、不仲になってしまった父である真一郎との心の交流を不思議なアイテム『水晶の数珠』を通して描いています。ぜひ寝る前に1編ずつでも読んでみてはどうでしょうか。 

七つの黒い夢』、乙一 [ほか]、新潮社、2006年

 天使のように美しい顔をした私の息子。幼稚園児の彼が無邪気に描く絵には、想像を絶するパワーがあった。そしてある日__。
 乙一の傑作『この子の絵は未完成』をはじめ、恩田陸、北村薫、岩井志麻子ら、新感覚小説の旗手七人によるアンソロジー。
 短編集故に、一つ一つの話が短いので普段からあまり本を読まない人にもお勧めできます。ただ、少しおどろおどろしいお話もありますので、苦手な方はお気をつけてください。

号泣する準備はできていた』、江國香織、新潮社、2006年

 直木賞を受賞した短編集。大人の恋愛模様を描く12編が収められています。
 『号泣する準備はできていた』では、主人公の文乃と、隆志、姪のなつきを描く。肉体関係にある文乃と隆志はそれぞれに体の関係をもつ別の愛人がいたが、そのことに悩む文乃はなつきとのやり取りの中で思いを巡らせて___。
 何気ない日常の1ページを描きながらも美しい世界観が描かれている1篇です。

カーテンコール!』、加納朋子、新潮社、2020年

 閉校が決まった女子大の私立萌木女学園。そこに集められた、単位が不足して卒業できない『落ちこぼれ』の生徒たち。卒業するため、訳アリの彼女たちは寮での共同生活を送ることになります。互いに関わる中、彼女たちは自らのコンプレックスや学業不振の理由に向き合い、成長していきます。彼女たちのひたむきに生きる姿に励まされる、爽やかな読後感の青春連作短編小説です。

朝日のようにさわやかに』、恩田陸、新潮社、2010年

 恩田陸さんによるホラーありミステリーありSFありのさまざまな作品を楽しむことが出来ます。『朝日のようにさわやかに』とありますが、あまりさわやかではなく背筋がぞくっとするようなお話が多いので、刺激が欲しい方にオススメです。好き嫌いはあるかもしれませんが、この中から気に入る作品を見つけてみて下さい。