【特集図書・2018年7月】

 こんにちは!学生ライブラリースタッフです。

 7月に入り前期セメスターも最終月となりました。最終講義に近づくにつれてレポート課題が発表されたり、定期試験時間割も発表されたりして、勉強も追い込みの時期になってきましたね。さて、レポート執筆や試験勉強の休憩に図書館の特集本はいかがでしょうか。また違った世界での休憩時間を味わえるかもしれませんよ。

雨のち晴れ、ところにより虹』、吉野万理子、新潮社、2016年

 人間関係のすれ違いや行き違いは些細なことがきっかけで起こってしまいます。相手を大切に思うばかりにかえって相手を傷つけてしまうときもあります。それでも大切な人と繋がり続けるためには、恐れることなく互いを理解するために言葉を交し合うことが大切であると教えてくれる物語です。梅雨の季節となり、気分の沈む日が続く中でほっこりとする湘南が舞台の6つの短編集です。

あしたはれたら死のう』、太田紫織、文藝春秋、2016年

 “なぜ、私は「あしたはれたら死のう」と書いた翌日、橋から飛び降りたのかー。” 本書は同級生男子との心中未遂によって一部の記憶と感情を失った少女が自身の心中理由を探し始める物語です。その中で少女はスクールカースト、家庭環境、恋愛の悩みといった皆さんも一度は直面した経験のあるはずの悩みと向かい合っていきます。雨の日が続いて部屋にいる時間が増える6月、自分の悩みと向き合ってみてはどうでしょう。

古池に蛙は飛びこんだか』、長谷川櫂、中央公論新社、2013年

 「古池に蛙は飛びこまなかった」本書のあとがきにて筆者はこう締めくくっている。
 今、芭蕉の句“古池や 蛙飛びこむ 水のおと”ほど広く世に知れ渡っている句はない。その一方で昔から謎めいた句とも言われてきた。芭蕉ともあろう者が、“どこかにある古池に蛙が飛びこんで水の音がした。”という単純な内容の句を詠んだのか、本当の意味は別にあるのではないか。人々の興味は尽きなかった。本書はそんな芭蕉の句について先人たちの話を交えつつ、古池の句の真実へと迫っていく。

ルーズヴェルト・ゲーム』、池井戸潤、講談社、2014年

 中堅電子部品メーカーの青島製作所は大手ライバル企業の攻勢を受け、業績不振に。リストラが始まり、野球部を廃部にすればコストはうくけれども……社長、選手、監督、技術者たちが人生とプライドをかけて挑む大逆転物語。テレビドラマ化されるほどの人気作です。終盤には胸が熱くなる展開があり、読み終わった頃には気分爽快。この本を読んで梅雨の憂鬱な気持ちをかっ飛ばしましょう!!

雨恋』、松尾由美、新潮社、2007年

 雨の日しか会えない幽霊の千波。彼女の死の真相を探っていくうちにいつしか彼女を愛し始めていた。ミステリーとラブストーリーが織り交ざる心温まる作品。文章が透き通るほど綺麗なので読みやすく、読み終えた頃には温かい優しい気持ちに。雨が降る1人の夜に是非読んで欲しい作品です。

月のしずく』、浅田次郎、文藝春秋、2000年

 この作品は7つの短編からなり、どの登場人物も順風満帆な人生を送ってきてはいないところが印象的な作品です。どこかに翳(かげ)を持つ個性ある男女が心を軋ませながらも歩いていく物語です。表題である「月のしずく」もオススメですが、「銀色の雨」「ピエタ」など、どの短編も心に響きます。幸せの形は人それぞれ違う、そんなことを感じさせてくれる1冊です。1つ1つの話自体は軽いので、ちょっとした空き時間に読むことができます。ぜひ読んでみてください。

死神の精度』、伊坂幸太郎、文藝春秋、2008年

 「俺が仕事をするといつも雨が降るんだ」―雨が降るとき、それは死神が仕事をしている時かもしれません。死神は一週間、対象者に接近し調査、”可’か“見送り”を決める……この物語は様々な境遇を持つ6人の調査について死神の一週間を書いたものです。雨の日に「もしかしたら?」と思いながら読むと、ちょっと怖いですが、人間離れした死神と調査対象の人間との間にやけに人間味を感じることのできる小説だと思います。

龍神の雨』、道尾秀介、新潮社、2012年

 タイトルの「龍」は、誰かを恨みながら水の中で亡くなった人の魂という意味です。血の繋がりのない家族が抱える問題、そして訪れる死。母を交通事故で亡くした添木田蓮と楓、父の再婚相手と暮らす溝田圭介と辰也、同じ境遇を持つ2つの家族の運命が交差するミステリー小説です。この小説では、常に雨で、情景描写に雨の日の特徴がちりばめられています。二つの視点から交互に話が展開されている構成なので、一度読むと一気に読めると思います!