【特集図書・2018年2月】

 こんにちは!学生ライブラリースタッフです。

 今回の特集図書、テーマは『人生の夜明けを待つ』です。今回の特集では、書き手や登場人物たちの信念がこもった作品を選びました。運命に耽溺し、しかし溺れきらず、しっかり生きた人たちの物語です。みなさんも、試験期間も終わり、自分の時間が増えるかと思います。今年度の自分の成長に満足している人も、そうでない人も、ここで一度自分の「人生」を見つめ直してみませんか?

また、同じ夢を見ていた』、住野よる、双葉社、2016年

 『君のすい臓を食べたい』で有名になった住野よるの第2作目です。これは1人の少女がある3人の女性達と出会い、自分のあり方を見つめ直していく物語です。あるいは、少女と『しっぽの切れた彼女』が、出会った女性達を救済していく物語だ、と評することができるかも知れません。静かに降り積もる言葉の重みを感じつつ、いずれ訪れてしまう結末に、あなたはきっと胸を焦がさずにはいられないでしょう。雪のように繊細な情景の数々と、読み手を救済へと導く構築の美学を堪能してください。

棋士という人生:傑作将棋アンソロジー』、大崎善生、新潮社、2016年

 羽生善治先生や藤井聡太先生の活躍で近年注目されつつある将棋界ですが、その天才の陰に隠れ、挫折していった棋士達のことを、みなさんはご存知でしょうか? 将棋という盤戯に生涯をささげ、並々ならぬ努力の果てに手に入れたチャンスを掴みきれず、大きすぎる才能の隣で、ひっそりと姿を消した棋士達にスポットを当てた本作は、将棋界の哀歓と、それでも指し続ける若者達の覚悟を描いたエッセイ集です。

月の影影の海』、小野不由美、新潮社、2012年

 「優しくしてもらわなければ、人に優しくしてはいけないのか!」十二国という世界に突然つれてこられた女子高生『陽子』が、厳しすぎる現実に直面しながらも生きることの意味を見つけていく物語です。ひとりぼっちの彼女に対し、世界は何も与えてくれません。それどころか、関わった人々は彼女を罵り、売り飛ばし、裏切り続けていきます。そんな環境に置かれた陽子ですが、『楽俊』に出会い、強く歩みを進めます。この物語の凄みを的確に表現できるだけの語彙力が私にないことが悔やまれますが、きっとあなたの人生を変える作品になるはずです。

雪の花』、吉村昭、新潮社、1988年

 あなたは『種痘』という言葉を知っていますか? 『種痘』とは、天然痘という病気を予防するために用いられた医術です。種痘と聞いて真っ先に名前が挙がるのは『緒方洪庵』かも知れません。しかし、名医『緒方洪庵』よりも先に、種痘を広めようと奮闘した町医者が実在したことを、あなたはご存知ですか? 私財を投げ打ち、石のつぶてを投げられ、狂人と罵られても、諦めず、投げず、折れず、自分を否定した人たちを救うために人生を駆け抜けた、1人の男の物語です。

罪の声』、塩田武士、講談社、2016年

 昭和を代表する劇場型未解決事件『グリコ森永事件』を皆さんご存知でしょうか? 『かい人21面相』と名乗る犯人グループは食の安全を人質にとり、当時の日本を震撼させました。その時用いられたのが子供の声を使った脅迫テープです。その事件をモデルに、真相はこうなのかもしれないと思わせられるほど、リアリティーを追究している作品です。加害者にされた人たちの狂っていく人生は読み応えがあります。本作を読み興味が出た人は是非、 『グリコ森永事件』を調べてみてください!

燦1(風の刃)』、あさのあつこ、文藝春秋、2011年

 江戸から遠い田鶴藩。その藩主を襲ったのは、まだ幼さの残る少年『燦』。筆頭家老の息子伊月は燦と刀を交えますが全く歯が立ちません。今まで剣に自信を持っていた伊月は、自分の力不足のせいだと分かっていながら嫉妬しています。秘密を背負った燦と、強くなりたい伊月。2人の少年の微妙な心の距離が見事に書かれています。友達に嫉妬してしまう自分の弱さを感じている人は、是非手にとって、運命に挑んだ少年達の姿や友情に触れてみてください。本書が自分を認めるきっかけになればと切に願っています。